そうか、チャールズにも子供が……。
笑った父は、どこか遠い目をしていた。私が生まれた頃を呼び起こしていたのだろう。
私自身、自分の子ができることに奇妙な感覚を持った。子供は苦手ではない。幼少期には幼い弟の面倒をよく見た。だが、それとは全く違う。生まれた子を見たとき私は何を感じるか。無事に生まれたその瞬間を喜ぶか、後を継ぐであろう将来を案じるか、何の感動もなく受け止めるか、想像がつくはずもない。
父は……二十数年前の父は、初めての我が子に何を思ったのだろう。
兄上に似ていますね。それに瞳は、同じ翡翠だ。
フィリップはそう言うが私にはよくわからなかった。第一、まだ赤ん坊だ。顔の作りなどわかるものか。
ただ、瞳がそっくりそのままなのは確かだった。翡翠の、綺麗な宝石のようだった。じっと見つめると、視線に答えるように小さな手を伸ばしてくる。なんとなく、この子は、少なくとも性格は、私に似ないのだろうと思った。聡明で誠実な、ヤーデの血に相応しい人間に育つだろうと。そうでないと父の頭痛の種が増える。自嘲気味に笑いながらふにゃふにゃとした手を握ると、丸々した顔に笑顔が広がった。
ちゃんと愛情を持って接してあげているようで、一安心です。
ヴァンは人を畜生か何かとでも思っているのか。これには本当に、心の底から、大きなお世話だと言ってやった。
確かに、生まれる前は多少なりとも不安を抱えていた。だが、自分の子に愛情を持てない親などどこにいようか。気にかけるなという方が無理な話である。特に、幼いうちは。妻や侍女に任せている分には問題ないのだが、目前にするとどうにも、目が離せない。覚束無い足取りを見ていると、舌っ足らずな声を聞くと、冷静を欠いてしまう。
思い返せば、いつもそうだった。腕に抱いた時、一人で立った時、父と呼ばれた時。
「ちちうえー……」
舌っ足らずな声音がして、まただ。引き締めていたはずの自我が、脆くなる。そうして、意識せぬうちに手を伸ばしてしまうのだ。
「どうした、デーヴィド」
子供の成長を見守るのも親の務めらしいが、なかなかに難しい。