「グスタフ」
 名前を呼ばれ、首を回した瞬間だった。頬に何かが当たる。
「ひっかかった」
 にやりと楽しげなロベルトと、状況が理解できない真顔のグスタフ。二人の視線が交差して、一瞬の沈黙が降りる。どう反応するべきか悩んだ末に、グスタフはとりあえず、「なんだ」と言った。
「えっ、えぇ~……」
 落胆の声をあげて、ロベルトは肩に置いた手を下ろす。それでやっと、頬に押し付けられていたのが彼の指だったと気付いた。
「なんだ、って言いたいのは俺の方だよ。なんだその反応!」
「そっちこそ、今のはなんだ?」
「え……やったことないのか? とんとんってやってぷにってやるやつ」
「? ああ」
「……わぁお」
 半ば呆れ、半ば感嘆しながら、ロベルトは天井を見上げて部屋の中をぐるぐると歩き始める。困ったときの癖だなとグスタフは思った。
「人ってさ、普通は肩叩かれた方に振り向くだろ。で、指立てておくと丁度よくほっぺに当たるから、それが楽し…くはないけど、なんか、してやったりって感じする、みたいな……」
 グスタフはしどろもどろの説明を真剣に聞く。あーだのうーだの唸るロベルトは頭を捻るのに精一杯で、不意に名前を呼ばれたことにも全く警戒していなかった。肩を叩かれて、躊躇いなく振り返った時には遅かった。
 ぷに。そんな音がしたような気がした。
「なるほど」
 ぷにぷにと、何度かロベルトの頬をつつく。
「……おい、離せ」
 一瞬見開かれたロベルトの目が半眼に変わる。オブシディアンの瞳はなんだかどす黒い。鋭い眼光を受け流して、グスタフはしれっと言った。
「してやったりって感じ、だな」

《グスタフ語り》友人に肩をトントンされ、振り向いたら頬に相手の指が入りました。「ひっかかったー♪」さて、グスタフの反応について語りましょう。 http://shindanmaker.com/182772
…ということで書きました。短時間でSSを書く練習。
20140103

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