ここのところ急に寒くなって、日の光と冷気が目覚ましになっていた。俺は寝起きが良いわけじゃなくて、寒いのが苦手で、それがプラスされるとイコール布団から出れないって等式が成り立つわけで、でもまあ結局、
「起きたくないっ!」
 と言いながらバサッと布団をひっくり返す、矛盾した行動をしなければいけない。それが最近の俺の朝。
 勢い良く起きた所為で余計に寒いし、朝日を浴びたいけどカーテンを開けるのは寒いし、すっかり体温が移った服を着替えるのも寒いし、ああくそさっきから寒いことしか考えてない。
 着替えてカーテンを開けて外を見る。けど見えない、相棒の姿。ここのところは、だいたい見えない。毎日毎日熱心に剣を振るあいつ。ちょっと前までは、窓の隅に見えたもんだけど。場所変えたのかな、まあこんな寒い日までご苦労なことだ。剣の腕なんて十分なのに、癖なんだとか言って、真面目ちゃんにもほどが。
 取り留めのない思考を断ち切ったのは、大人しいノック音、慣れ親しんだ音。入ってきたのは真面目ちゃんの相棒。
「どーしたよ」
「起きたようだったから、コーヒー」
「お、さんきゅ」
「いや」
 マグカップ二つと魔法瓶を持って、気の利くこと。注がれたコーヒーの熱を手のひらで味わってちびちびと飲む。入れたてのようで味もなかなか。って、あれ、なんで外にいなかったんだ。
「こうも寒いと、な」
 嫌になるんだ。
「……ふーん」
「……なんだ」
「いいのかよ」
「たまにはな」
「真面目ちゃんの台詞とは思えん」
「私だって、不真面目だ」
「『だって』?」
「お前は不真面目だろう」
「言うねえ」
 そうやって軽口叩いて、言い負かして、言い負かされて、そんなことが出来るようになったのはいつからだったかな。

四年の間タイトルつけてなかった衝撃。ロベルトに対してだけ軽口叩くグスタフいーよね。
111205

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