「飛竜よ!」
 竜騎士の呼び声に応じて幼い飛竜が舞い降りた。翼がうつ風がパラメキア皇帝に襲いかかる。ブレスが地獄の青い炎を食い止める。
 飛竜に守られて思わず息をついたフリオニールは、飛び出したリチャードに手を伸ばすこともできなかった。
 皇帝と対峙したリチャードが退却だと叫ぶ。どこへ、と問いながら、直感した。彼は飛竜に乗らない。
 飛竜が飛び上がった。旋回に合わせて、咄嗟にマリアを抱えたガイが飛び乗る。リチャードから目を離して、フリオニールも飛竜にしがみつく。レオンハルトはまだ皇帝を睨んで立ち尽くしている。この手であのばけものを亡き者にしてやろうという思いが手に取るようにわかった。それなのに動かないのは、皇帝が召喚した炎と飛竜が吐いたブレスが壁になっているからだ。マリアの悲鳴のような叫びはレオンハルトに届いているはずなのに、飛竜には見向きもしない。
 無理にでも連れていかなければ。飛び降りるために膝を曲げた瞬間だった。
「貴様もだ、ダークナイト!」
 リチャードが、怒号と共になにかを投げつけた。小さな木の実のようななにかは壁を越えて、レオンハルトは反射的にそれを掴み取る。視線が手の中へ落ち、竜騎士の背へ向き、そして飛竜を見上げた。すかさず、フリオニールは手を伸ばす。
「来るんだ」
 無言で頷いた一呼吸の後、レオンハルトはフリオニールの手を取って飛竜に乗った。

 飛竜が翼を翻す。竜騎士を見下ろして上昇を続ける。パラメキア城から脱して、進路を北西へ。振り向くと、轟音の中で城が崩れていく光景があった。やがて巨大な建造物が蜃気楼のように浮かび上がった。あとに残ったのは、頬を叩く風の音とマリアの嘆きだった。

「飛竜、お願い、戻って。あそこには最後の竜騎士がいるの。あなたと一緒に生きる竜騎士よ。お願いだから、ねえ飛竜、行かないで」

1月27日のTM10にて発行したFF2本より。一応FC版イメージです。リチャード好きなんですよお。彼に対してすごく夢見てる。
190119

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