「今年は張り切って!ケーキを作っちゃいました!」
 エプロン姿のアクティは満面の笑みでホールケーキを掲げて見せた。
 おお!という声が一斉に上がる。食堂に集まったのは八人。白いショートケーキの上には真っ赤ないちごが、その人数分揃っていた。
「それじゃあ入刀~♪」
 アクティがケーキを切り分けるのを、グラビティが横から指図し、それを大和がうるさいと一括し、二人をエレクトロがなだめる。彼らに構わずケーキをじっと見つめるのはアーミィとホライズンで、その少し後ろにメモを取るギガデリックと主役であるはずのボルテージが立っていた。
 ボルテージは、真顔で考える。機械である自分を祝うのは、去年と同様で、まだ理解はできる。だが、わざわざ用意した祝いの席で出されたケーキ。八人の中には生き物ではない存在があり、当然食べ物の接種はできない。
「……騒ぎたいだけか」
「他に何があるっていうんだよ」
 ぽつりと漏らした言葉にギガデリックが返事をした。ずいぶんと楽しそうな、ニヤついた表情。ボルテージは短く息をついた。
「八等分しているが、あれはどうするんだ。喧嘩になるぞ」
 軽い口調で言いながら、ただの喧嘩で済むものかとボルテージは内心ハラハラしていた。その心中とは対照的に、少年の笑みはそのままだ。
「ホライズンはジェノサイドの野郎に持っていってやるだろ。それに、後でジャックが来るからな」
「……それで、お前がシークに一つ渡すと」
「おいギガデリック! あいつが来るのか?!」
 ジャックの名前に反応したアーミィが、二人の間に割って入った。機械にも地獄耳があるのだろうか。ギガデリックがそんな機能をつけているとは思えないが……と、ボルテージは少年ロボットから静かに距離を取った。
 ケーキのことを忘れて騒ぎ出したアーミィを尻目に、ボルテージは少年少女たちの輪を眺める。
 アクティと大和はゆっくりとケーキ味わいながら、その作り方の話で盛り上がっている。グラビティの食べ方はまさしく、食い散らすという言葉がぴったりだったが、うまいうまいと言っている辺りちゃんと味を感じているようだ。エレクトロはその三人の前に座って、時々会話に混ざりながら微笑んでいる。ホライズンはアクティに一言断ったあと、二つの皿を手に食堂を出ていく。ギガデリックの言葉通り、地下牢のジェノサイドの元へ向かったのだろう。ギガデリックとアーミィの喧騒はいつの間にか消えていた。ギガデリックもホライズンと同じように皿を二つ持って立ち去るところで、彼のケーキをうらめしそうに見つめるアーミィはいつものように言い包められたに違いない。
 ボルテージにはそれが、ずいぶん呑気な光景に見えた。

ボルテージ誕生日2014ver. 平和っていいよね、そういう話。
140928

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